慰霊巡拝へのいざない

　さて、先の大戦が終結してから早くも六十年が過ぎました。
多くの人々が国家と故郷、そして家族を守るために出で立ち、再び家郷を踏むことはありませんでした。これらの方々のみたまは、靖国神社をはじめ、全国の護国神社に祀られ、国民の感謝を受けるとともに、各家庭においても、懇ろに供養がなされてきました。
　しかし、未だに多くの御遺族は、父や兄弟、親戚がどのようなところで、どのように生き、そして亡くなったのかに、つきせぬ関心を寄せるとともに、その最後の地にお参りすることで、納得ゆくまでみたまを慰めたいと考えております。そうした希望に応えるものが、「海外戦没者慰霊巡拝」です。
海外慰霊巡拝については、これまでも主として日本遺族会が行って参りましたが、参加資格の問題もあり、慰霊を希望される方々全てが参加できる性質のものではありませんでした。そこで、千葉県、栃木県護国神社におきましては、平成十二年以来、ご遺族はもとより、御英霊の親族や孫、更には慰霊を希望される全ての方々へ門戸を開いた、海外戦没者慰霊巡拝を行っております。
　本巡拝におきましては、千葉県または栃木県護国神社の神職が祭壇一式を持った上で同行し、日本政府建立の慰霊碑前で合同慰霊祭を行うとともに、希望により、参加者ゆかりの各御英霊の戦没地点、ないしはそこに最も近づける場所において祭典を奉仕させて頂きます。これらの巡拝においては、例年、多くの御遺族が祭りの場で御英霊と対面の上、涙ながらに語りかけるとともに、御英霊が結ぶ縁のもと、初対面の遺族や神職達がひとつに解け合い、まさしく一生の思い出となる旅となりますし、更にはこの旅が機縁となり、毎年、慰霊巡拝に参加される方も少なくありません。
　皆様方におかれましては、この記念すべき年の慰霊巡拝に是非ご参加の上、我々神職一同とともに、御英霊の方々に慰霊の誠を尽くして頂けましたなら幸いに存じます。

栃木県護国神社宮司　稲寿