はじめに
南海の楽園、パプアニューギニア(東部ニューギニア)では、かって15万余の日本軍将兵、民間人が命を失い、栃木県護国神社の御祭神55361柱のうち、およそ五分の一にあたる方々も、この地をゆかりの地としています。
平成15年初秋、栃木県護国神社と滋賀県の日吉大社の神職が、10日間にわたり、パプアニューギニアのオーエン・スタンレー山脈中に続くココダ・トレイルを辿りつつ、山中各所で戦没者の慰霊祭を行ない、戦没日本軍将兵の英霊をおまつりし、併せて戦禍に巻き込まれたパプアニューギニアの人々や、同じく戦陣にたおれたオーストラリア軍(豪州軍)将兵の魂のやすらかならんことをお祈り申し上げました。
ココダ・トレイルとは、ニューギニアの太平洋側から、スタンレー山脈を越え、首都ポートモレスビーに至る山道を指します。昭和17年夏、ここでは日本陸軍の南海支隊と、オーストラリア軍が激しい山岳戦をまじえました。戦後、多くのご遺族や戦友会によって東部ニューギニア各地の慰霊巡拝が行なわれましたが、スタンレー山脈をはじめとする山岳部においては、アプローチの難しさもあり、いくつかの例外を除けば、日本からの登山や慰霊巡拝の対象とされなかったのが実情です。
ココダ・トレイルの沿道には現在も陣地のあとや遺棄された兵器など、戦争の爪あとが残され、また、うっそうと茂ったジャングルの下には、今も日豪の兵士達が眠っています。同時に、雄大で濃密な自然、そして静かで美しい村々と、そこで暮す人々とのふれあいを、存分に味わうことができます。
そこで当神社では、より多くの方々にココダ・トレイルの存在を知ってもらい、是非歩いていただきたいと考え、ここに行動記録を公開することにいたしました。なぜならば、多くの日本人がココダ・トレイルを歩くことは、ご英霊をはじめとして、そこで失われた命を思い起こし、体に刻み付けることになり、ひいては、日本とパプアニューギニア、オーストラリアとの永き友好の礎となると信じるからです。ぜひ、歩いてみて下さい。
平成十六年十一月吉日 栃木県護国神社資料展示室